(新)さんっ、ななっ、はっち ~本店~

(新)さんっ、ななっ、はっち ~本店~

新しい『さんっ、ななっ、はっち ~本店~』です

鱗で泳ぐ

金木犀がうっすらと香る闇夜に、鱗雲に囲まれた月が泳ぐ。

田んぼにまっつぐ突き抜ける線路しかない生まれ故郷で
畦道に立ちつくし夜空を見上げた。
でもこの街で立ち止まることは許されない。
疾走って疾走って走り続ける。
ふと立ち止まった瞬間、背中に張り付いた魔が…

鱗の中で戯れる月を見上げ、
そして、恐る恐る後ろを振り向く。

大丈夫、まだ追いつかれてない。
ニヤリと口角を上げ、
金木犀の香りを胸一杯に吸い込み歩みを始める。

大丈夫大丈夫。俺はまだ疾走れる。
周りに人気が無いのを確認し、軽くスキップしてみた。